My 鮨

鮨好きは友人にも多く、それぞれに好みの鮨屋をおさえているようだ。自分の場合もオケージョン別に馴染みの鮨屋がある。
まずは銀座は「野じま」。元々は18年前に西麻布で飛び込みで入ったのが縁で馴染みになっていった。予約の取れない有名店と違って大体1週間前に連絡すれば取れるし、まずは近頃の鮨屋のような気取った感がなくていいし、魚に純粋に向き合っている感じが好きだ。つまみの魚が実に旨い。有名店という訳ではないが、接待にも同伴にも向いているし、重宝な1店だ。
麻布十番「めい乃」もたまに訪れる。今話題の女性大将の店だ。上智大出の才媛で、「すし匠」「拓」で修行し、銀座「あらい」の2番手だったが、1昨年麻布十番にオープンし、あれよあれよという間に人気店になってしまった。女性ならではのコース仕立てなのと見た目の美しさなど、自分の世界を確立しつつあり、男臭い鮨業界に爽やかな新風を吹かせている。
南青山の「かさ松」は気楽に過ごせる店だ。音楽はいつも洋楽で、場合によっては当日にでも予約できるし、金額もバカ高くないので、思い立った日に行くことが多い。海老の日本酒漬けや塩辛など酒のあても楽しみな店である。
上記のようなコース仕立ての多い鮨業界の中で唯一お好みで食べれるのが広尾商店街の「小倉」だ。ここもかつてに比べると人気店で今や1週間以上前じゃないと予約が取れないが、行けば気楽に好きなものを好きなだけ食えるし、俺はいつも「青ものオールスターズ」で鰯、鯵、鯖、小肌、たまに秋刀魚などを食うし、コース仕立ての店にはあまり無いシャコや鮑、いかの塩レモンなども好きだ。たらふく食べて、飲んでも2人で3万円台。良心的値段で俺的には日本一気楽な鮨屋だ。
少し郊外になるが等々力にある「會」も好きだ、以前は家が近くだったのでよく行ったが、離れた今でもたまに行きたくなる。この店もお好みだがとにかくネタが豊富だ。魚はもちろん、貝類、甲殻類、白子や子持ち昆布、鯨の尾の身まである。そして野菜も豊富でカウンターには旬の野菜がドンと積んである。大将の中山さんは下戸だが研究熱心で、冬場には貝類や肝を使ってバケットに詰め込んだバゲット・ファルシなどを輪切りにしてサービスで出してくれる。白子も鱈とフグの食べ比べでバター焼きにしてくれたりで、あれもこれもで楽しみがいのある鮨屋だ。世田谷界隈に住む芸能人もたまに見かけるが、いつも混んでいる賑やかな郊外鮨屋の代表格である。
そしてやはり銘店代表は四谷の「三谷」だろう。いつの縁で予約をもらえるようになったかは忘れてしまったが、1年半ごとに貸し切り6席分の予約をいただいている。凛とした空間の中に大将の命をすり減らしているんじゃないかと思うくらい鮨と酒のマリアージュの研究に余念がない。立ち居振る舞い、会話、出てくる料理と酒、非の打ち所がないとはこのことだ。気楽さはあまり無いにしても、1年半に一度襟を正して訪れる店だ。
昔、とある鮨屋の大将に言われたことがある「うちの鮨は断面にすると周り2、3粒の厚みで硬めに、その中を柔らかめに握っている。だからカウンターに置いたら15秒以内に食べて欲しい」と。それは本当かどうかわからないが、それ以来、カウンターに置かれた握りはすぐに食べるようにしている。たかが鮨、されど鮨だ。